Juntaro Okabe
  岡部淳太郎作品





未完の夜


書けなかった詩の断片が
ちぎれた草になって

風に舞っている

いのちは永すぎる未完
死してなお
始まりにさえたどりつけない 未完

私の夜はいつもと同じ旋律を
内側の街路にまきちらしながら
穏やかな騒霊となって
鎮まっている

風が舞っている

私の草がちぎれて
昏いままで踊っているのだ
誰にも知られることなく

いのちは永すぎる未完
その始まりさえない鼓動の中で
詩は書かれながら
書き終えられながら
なおも未完

書けなかった詩も
書き上げられた詩も
すべての詩が
ちぎれた草になって

風に舞っている

窓の内部で
熱い煙は次から次へと灰に姿を変え
終ることのない
始まることを知らない
いのちの響きを
無為のうちに過ごしている

女の項のようななめらかな曲線も
老いた岩のような頑なな角度も
すべてが根を失った草となって
喪の諦めに似た静けさの中で

風に舞っている

夜はちぎれて
そのわずかな断片を
私の手の中に握らせる
この街路のどこかにあるはずの
鳥のねぐらを求めて
未完の眠りの真意を探るように

栄えある名詞を食み
また殺め
葉脈のかすかな綻びでさえも
気に留めながら

風が舞っている

到達することの叶わぬ
いのちの始まりを
目蓋の裏に収めようと
その未完の性質とともに
吹き過ぎている

歌うように また
すすり泣くように




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